[Column] ADV と SNV、それから RPG
玄兎 2008.8.02 (土曜日)
これも何ヶ月か前に書いたテキストですが(^^;
サウンドノベル(以降、SNV)が何故、旧来のコマンド選択型アドベンチャーゲーム(以降、ADV)を圧倒するに至ったのかというのは、いくつもの理由が考えられるわけですが。
その内でも ADV と比較して、SNV が「物語として優れている」ないし「物語の出来が評価基準にされる」理由は、SNV の方が、より「物語を読むための装置」に特化しているからでしょう。少なくとも ADV と比較して、総プレー時間における「テキストを読んでいる時間」と「何かを選んでいる時間」の天秤は、大きく前者へと傾いていることは確かです。
プログラム上では、単にループを発生させていないダケなんですけどね。
SNV の優位性
人は選択することで集中力というリソースをすり減らし、精神的な疲れを感じるようになる……ということは経験からも、また以前に紹介したアメリカで行われた実験結果[*1] からも考えうることです。
で、その視点から考えると、SNV は ADV に比べて「何かを選択する」ことが非常に少ない。
精神的に疲れないわけです。
これが初心者でも長時間連続プレーできる理由であり、また複数の分岐を許容する(何度もプレーする)理由でもあります。
旧来の ADV は選択する機会が多く、結果として精神的な疲労はかなりの速度で蓄積していきます。それは「ADV が長時間のプレーに不向きである」ということの証左になっています。無理せず疲れを感じたところで止める、というプレースタイルでは一回のプレー時間が短く、ブツ切れになってしまうわけです。
しかし物語は長く、連続していて、途切れることがない。
ここで問題になるのが「キーフリー」です。
以前、デジタルゲームに打ち込まれた誘導因子(バイアス)とキーフリー対策について書きました[*2] が、ADV は簡単にキーフリー状態になってしまうという欠点がありました。一回ごとのプレー時間が短く、しかし情報は多く、細かい。特に謎解き系の ADV ではそれが顕著です。そのため、たとえば『探偵・神宮寺三郎』シリーズは、知名度はあるけどプレー経験者が少ないという非常に切ない現状にあったりします。
ADV のハードルが高いのは、「謎解きが難しいから」というより、単純に「疲れるから」「忘れちゃうから」ということじゃないかと思うんですよね。
対する SNV というスタイルは――繰り返しになりますが――選択することが ADV に比べて少ない。情報量には大差なくても、処理すべき選択が、ADV ほど頻繁には現れないわけです。
だから疲れないし、長いテキストを読むこともできる。
テキストを読むとき、常に「どう進めるのか」「何を選ぶのか」といったことについて考えなければならない ADV に比べて、SNV はテキストを読むことに集中できるわけです。
それが SNV の「手軽さ」というアドバンテージです。
そろそろ RPG の話題に
ということで、ADV と SNV の比較について簡単に書いてみました。
入門者さん相手に遊んでいると、この辺の話はどうしても避けては通れない部分があったので。
だってこれ、ハードルの上げ下げを調節する方法そのままだから。
マスタリングするとき、自分が今、SNV と ADV のどっちの方式でマスタリングしているかを意識してみると、実はそれが無意識的に「ハードルの高さ」を理解することにつながるんじゃないかと思ったんですね。
ADV や SNV のプレー経験があったら、「自分がどう操作していたか」「なにが面倒だったか」「どんなときに迷ったか」だけ考えるんでも、シナリオデザインやセッションハンドリングの役に立つと思います。ぶっちゃけストーリーがどうだったかとか、そんなこたぁどーでもいいんで(笑)
TRPG の経験ほど個性的じゃない分、たぶん一般化しやすいことだと思います。
- [アメリカで行われた実験] = エントリ「人間の集中力をリソースと見なす面白い実験」 [↩]
- [誘導因子とキーフリー対策] = エントリ「誘導因子の背景(1) ~ デジタルゲーム」など [↩]