[Column] 誘導因子について(1)
玄兎 2008.4.01 (火曜日)
さて、前回はもう勢いに任せてガーッと書いてしまいまして。お陰でペテン師の「小さなことを大きく見せようとする」悪癖も、用語定義の甘さもそのままに、脳内のカオスそのままに垂れ流してました。スミマセン。
もうちょっとだけ整理して、正直なところを見ていただこうかと。
論文じみた文章は書きなれていないので、果たしてこれが理解されるものかというと、あまり自信はありませんが。
はじめに
このテキストは第一に“【対話ゲーム】[*1]としての TRPG の性質”を読み解き、“【対話ゲーム】としての TRPG の可能性を周知する”ことを目指すものです。
ここで定義される【誘導因子】とは誰もが持っている可能性であり、極めて一般的な対話(コミュニケーション)技術です。それ自体が目新しいことは何もありません。ただそれが無自覚的に運用されている現状を認識することで、より自覚的にゲームを楽しく演出できるようになる可能性を得ることができます。
このテキストで使用している定義書
当エントリは高橋志臣氏の編纂による『ロールプレイング・ゲームの批評用語』を利用して記述しています。
用語、書式の定義
- 【対話ゲーム】
言語を主とする表現力を〈ゲームトークン〉とし、対話によって行われる〈遊戯〉です。 - 【誘導因子(Bias)】
これは〈共同ゲームデザイン〉の技術です。
〈セッション〉の〈参加者〉の意図する〈ゲーム〉に介入し、新たな〈ゲームデザイン〉を提案したり、意図した〈セッションハンドリング〉を誘発させることを目的としたものです。
ロールプレイング・ゲームでは主に「発言」の形で行使されます。
これを行使することを「打ち込む」と言います。 - 〈 〉
カッコ内は『ロールプレイング・ゲームの批評用語』で定義された用語です。 - 【 】
カッコ内は当エントリで玄兎が定義した用語です。
【誘導因子】利用の基本モデル
【誘導因子】の機能序列を、試みにモデル化してみました。
[USER] が【誘導因子】を利用する〈参加者〉、[TARGET]が【誘導因子】を打ち込まれた〈参加者〉です。
- [USER] 志向する〈ゲーム〉のイメージを想起
- [USER] 想起されたイメージを元に【誘導因子】を構築
- [USER] 構築された【誘導因子】を打ち込み対象者に合わせて調整
- [USER] 調整された【誘導因子】を対象者に打ち込み
- [TARGET] 打ち込まれた【誘導因子】を解析
- [TARGET] 現在の〈ゲーム〉と【誘導因子】の示す〈ゲーム〉を比較
- [TARGET] 二者の〈ゲーム〉の差分を埋める新たな〈ゲーム〉を仮定
- [TARGET] 仮定された新たな〈ゲーム〉を元に〈ゲームデザイン〉を行う
【誘導因子】利用に必要なもの
【誘導因子】をまったく“狙い通り”に機能させるには、いくつかの前提条件をクリアしなければなりません。
- 志向する〈ゲーム〉のイメージ
利用者は、自身が志向する〈ゲーム〉のイメージを持っていなければなりません。これが漠然とした状態でも【誘導因子】は機能しますが、その場合、対象者の「読み取る力」に大きく依存することになります。より適確に【誘導因子】を打ち込むには、明確なイメージを持っていることが重要です。 - 対象者との共有知識・豊富な語彙
対象者との間に、自身が志向する〈ゲーム〉に近接する共有知識が必要となります。それを通じて【誘導因子】を正確に対象者に伝達します。また、発言によってこれを伝達する際は、イメージをより正確に構築するために、できるだけ豊富な語彙があることが求められます。 - 対象者の〈ゲーム〉に自由度がある
いくら【誘導因子】を打ち込んだところで、対象者が自身の〈ゲーム〉に自由度を持たせていなければ、対象者は【誘導因子】に則した〈セッションハンドリング〉を行おうとはしないでしょう。十全に【誘導因子】を発揮するには、対象者の〈ゲーム〉にある程度の自由度が求められます。
このうち特に [2.対象者との共有知識・豊富な語彙] における「共有知識」「豊富な語彙」は、それぞれ社会生物としての人間が持つ「読み取る力」「読み取らせる力」に属します。[*2]
- 「読み取る力」
他者の言動から、感情や意図を理解する能力です。 - 「読み取らせる力」
自身の感情や意図を、その言動によって他者に伝達する能力です。
これらについてはエントリ「誘導因子」で、いくらか詳しく説明しています。
以上で【誘導因子】の定義上の解説は終わりです。[*3]
まとめ
序文にもあるとおり、これは TRPG の【対話ゲーム】としての要素から読み解いた一例です。私見では特に〈アクロバティックな運用〉との相性が良く、逆に〈典型的な運用〉とは時に反駁することがあると考えています。
そうした意味では、このモデルは〈アクロバティックな運用〉の一形態を読み解いたもの、とした方がより正しい評価かもしれません。