[Column] 万能機械神の面白味
玄兎 2008.11.20 (木曜日)
【筆者註】
え、えーと、非常に恥ずかしくてもう赤面しまくりなのですが。
コメント欄でも xenoth 氏、水無月冬弥氏らにご指摘いただいているとおり、本エントリに書かれているアドヴェントの話は、解釈もへったくれもなく元のルール自体を長いことちゃんと読んでなかったというとんでもないポカミスからスタートしたもので、ものすごい的外れな話なのでゴメンナサイ。忘れてください m(__)m
うひーこのエントリ消してやりたい(泣)
F.E.A.R.ブランドのゲームに見られるシナリオクラフトには、「アドヴェント」という概念と、それに伴う「デウス・エクス・マキナ」というチャートが適用されてます。
ちょっとノックしてみたんですが、今のところ考察は行われてなかったのかな、コレ。
SIMON 氏とのやりとりの中でちょっと考えたら面白かったので、流れからは逸脱するんですが、レスに代えてメモ書き。(コメント欄では「デウス・エクス・マキーナ」と書いてしまってますが、ルール上は「デウス・エクス・マキナ」でしたので、ここで訂正しておきます)
アドヴェントについて
アドヴェントについては、以下の通り定義されています。
アドヴェントは、シナリオの強制終了条件である。アドヴェントが発生すると、デウス・エクス・マキナが降臨し、シナリオは終了する。
(中略)
アドヴェントが発生した場合、GMはP63のデウス・エクス・マキナチャートをROCして、具体的に何が起こったのかを決定すること。(『アルシャードガイアRPGサプリメント エブリデイマジック』 p.55 より)
何らかの条件が成立すると、シナリオが強制終了する、ということです。
これ自体は、そりゃもう昔っからある話で。
ゴブリン退治のシナリオで、PC が「洞窟は暗くて汚いからイヤだ」とか拒否しまくれば、そのシナリオは続けられなくなります。要人警護のシナリオで、PC が「遊びに行ってきます」と要人ほったらかしで遊びまわっていれば、いずれ要人は暗殺者の手にかかることになるでしょう。
だからまあ、「強制終了しなければならない状況は起こりうる」という点については、「そんなん前からあるよなァ」って感想になるかと思うんですが。
アドヴェントの効用
……が、それを定義して明文化したってのが面白い。
アドヴェントのルールが明確になったことで、ゲームマスターの負担がまた軽くなってます。
従来、PC がシナリオから逸脱する行動をとった場合、ゲームマスターは即興で状況を作り上げ、軌道修正して元のシナリオに戻るようハンドリングするか、まったく別のシナリオを開始するか、さもなくば投げ出すか、といった選択肢がありました。
ここで問題になるのが、「投げ出す」という選択肢です。
あるいはシナリオから逸脱するような行動は、プレイヤーの意地悪、もっと言えば「悪意」であるかもしれない。
で、そのときゲームマスターがセッション終了を申し出ると、ゲームマスターがセッションを投げ出した、というコトになってしまうケースが往々にしてあります。(もちろん特定プレイヤーの悪意が明白であれば、他のプレイヤーはゲームマスターに同情してくれるとは思いますが)
このときゲームマスターは、プレイヤーの「悪意」に対して無力です。
傍若無人に振舞うプレイヤーに対して、ゲームマスターの対抗処置はというと、かつては「無限の戦力による懲罰」なんてのがありましたが、これも現在では「大人げない」とか「バランス悪い」とか言われちゃうようです。
そうなると後は注意を促したり、退場を命じたりするくらいでしょう。
どちらも他のプレイヤーを萎縮させかねない劇薬です。
で、ここで「アドヴェント」の概念があると、ゲームマスターは「アドヴェントが発生しました」と言ってシナリオを強制終了することができます。
やってることは「投げ出す」のと大差ないように思うかもしれませんが、この場合は用語と概念がある、ということに意味があります。
アドヴェントの効用とは、つまり「プレイヤーのルール違反に対して、ゲームマスターが執れる行動」というものを、ゲームシステムに組み込むことで、「投げ出す」というゲームマスターの暴挙ではなく「システムの正しい運用」というゲームマスター本来の職分を執り行っただけ、と言うことができるようになったってコトでしょうか。
このアドバンテージは意外と大きいんじゃないかと考えます。
アドヴェント運用の問題点
この便利なアドヴェントというルールにも、もちろん問題が無いわけではありません。
それは「ゲームマスターが簡単にシナリオを投げ出せるようになっちゃった」という点です。
古参ゲーマー、というより「TRPG マッチョ」かな? まあ、とにかく昔から「場数を踏んで強くなれ」って考えがあるわけですよ。
実際、僕も「特訓」と称してやたら無茶な注文をつけてくる先輩プレイヤーたちに、冷や汗たらしつつどうにか応え、ゲームマスターとしての応答能力が高まったという認識があります。[*1]
そういった一種の「特訓」は、往々にしてプレイヤーがシナリオから逸脱する行動をとったときに発生します。
で、これやって場数を踏んでおくと、セッション中にシナリオから逸脱したプレイングが発生しても、その場でシナリオの再編集(分解再構築)を行って対応することが――まあ少なくとも場数を踏んでないケースよりは――、可能になります。[*2]
ところが、そうした状況をイチイチ「アドヴェントが発生しました」と言って潰していたら、いつまで経ってもシナリオをちゃんとエンディングまで遊ぶことが出来なくなってしまいます。
だからまあ、ゲームマスターはそれほど大きく逸脱したのでない限り、なるべくアドヴェント判定でセッションを強制終了しないで、どうにかリカバーすることが望ましい、とも考えられます。
そのとき「アドヴェントの宣言がしやすくなった」というのは不都合もあるわけで、プレイグループの環境やマスタリング技術に合わせた「アドヴェントの取扱に関するガイドライン」が必要になってくるかと思います。(もしかしたら既にあるのかもしれませんが、手元の『エブリデイマジック』をざっと見た感じでは、それらしいテキストは見つからなかったので)
アドヴェントとベンダーの方向性
アドヴェントのルールは、実は F.E.A.R. の戦略と密接に関係するんじゃないか? とか思ってます。
このアドヴェントのルール、実は市販シナリオを使うときに、もっとも効果を発揮します。
どういうことかというと。
セッション中にゲームマスターがアドヴェントを宣言たとき、それは「シナリオの自由度の限界」ということになります。このとき犯人探しをすると、シナリオデザイナーが悪いってことになるわけです。
これを適用したとき、もし旧来の「ゲームマスター = シナリオデザイナー」環境でこれを行うと、「ゲームマスターのレフェリングは正しいけど、シナリオデザイナーとしては不備があった → ゲームマスター役の人物が悪い」ということになってしまいます。
ところが市販シナリオを使う限り、悪いのはシナリオデザインをした誰かであって、ゲームマスターと同一人物ではない、ということになります。
好意的に解釈すれば、これは「悪名はデザイナー/ベンダーが被るんで、消費者は楽しくゲームやってよね」ってコトかなぁ、とか。
ゲームマスターの負担を減らし、ゲームマスター志願者の数を確保することで、相対的に市場を活性化させよう! という試みだとすると、このたった一つのシンプルなルールが、やけに野心的な試みのように見えてきて、面白いなァ、と。
デウス・エクス・マキナについて
デウス・エクス・マキナについて、『アルシャードガイアRPGサプリメント エブリデイマジック』では、どんなモノなのかという説明は特にされていません。ルール的にはデウス・エクス・マキナの名を冠したチャートがあって、そのチャートに沿ってアドヴェントを実行せよ、というダケです。
脚注では語祖となった古代ギリシャ演劇の話と、ALG の背景世界であるミッドガルドにおけるデウス・エクス・マキナという神についてが書かれていますが、アドヴェントを実行するデウス・エクス・マキナと同一であるかは不明としています。
まあその辺の事情は実のところ、ゲームの機能としては大した意味が無いので横に置くとして。
デウス・エクス・マキナのチャートは、アドヴェントからは切り離せません。
こいつに面白味を感じたのは、主に二点。
シナリオを投げ出すな
ひとつは「アドヴェントが発生したとしても、ゲームマスターは責任をもってシナリオ終了の結果を描きなさい」と示唆していることです。
アドヴェントを適用したとしても、シナリオを終わらせるプロセスを描くことで、ゲームマスターとしての最低限の責任は果たさなければならないわけです。で、そのプロセスこそが「デウス・エクス・マキナ」となります。
その辺が前述の「シナリオを投げ出す」マスタリングに比べて、前向きなところでしょうか。
また、セッションの終了時間にアドヴェントを設定する、という使い道もあります。
検索してみた感じ、「時間アドヴェント」という表記がチラホラ見受けられましたんで、どうやらコレが一般的なアドヴェントの使われ方のようです。
この場合、時間アドヴェントの発生したタイミングに合わせて、降臨するデウス・エクス・マキナの姿を変える――つまり結末を変える――ことを、シナリオ中に書くことができます。
これも「アドヴェント」と「デウス・エクス・マキナ」という概念を設定し、明文化したことで生まれた機能でしょうか。
1 : 振り出しに戻る
もっともユニークなデウス・エクス・マキナは、このチャートの [1] に書かれた「振り出しに戻る」という結果です。
2D6 の ROC ですから、1 ってのはダイス振っても出ません。
これはゲームマスターが選択しなければ発生しない結果です。
この ROC、やはりコンベンション向けなのかなぁ、とか思います。
別にそうと決められているワケではありませんが、コンベンションに参加するとき、まあ運営時間内は思う存分、遊ぼうと思って参加している人がほとんどでしょう。そうすると、早い段階でアドヴェントが発生してセッションが終わってしまうと、その後の時間がものすごくもったいないわけです。
で、「再挑戦しよう」という話になるケースがあります。
セッションに一回性を求めるゲーマーの中には「同じシナリオは二度とない」として再挑戦は NG と判定する人もいます。まあ古いゲーマーほどそういう傾向が強いなんて話もありますが、比較的こうした再挑戦は、現在は受け入れられる傾向にあるようです。(伝聞なんで、確証は無いんのですが)
この [1] の結果は、それをオフィシャルから容認する、ということの表明とも考えられます。
まあシナリオクラフトってモノの性質を考えれば、最初っから一回性なんてモンは歯牙にもかけてないって話もありますが、とにかく「同じシナリオをリテイクしてもいい」とオフィシャルが公言してるのは面白いなァ、と。
そうなってくると、従来「使い捨て」感のあったシナリオ集というサプリメントが、何度も使えるお得なアイテムに変身する……のかもしれません。[*3]
これもまた、F.E.A.R. が「コンベンションを視野に入れている」と言われる所以、なのかも?
【余計な話】
本文中には書かなかったんですが、アドヴェントのアプローチによく似た別解を出したものとして『Aの魔法陣』(以降 “Aマホ”)があります。
Aマホではターンごとの時間を区切って、タイムオーバーになれば自動的に行動は失敗したことになります。また難易度を削りきれずにゲームオーバーになった場合も、SD はゲームの終了を告げます。これらは限定的な、プレイ時間やターン数を条件としたアドヴェントを採用している、と解釈することも出来るんじゃないかと。
ユニークなのは、F.E.A.R.ブランドのそれが「シナリオデザイナーを悪者にする」ベクトルであるのに対し、Aマホでは「SD を悪者にする」ベクトルがある点です。
- [ゲームマスターの特訓] = ゲームマスターを「特訓」しようと考えるプレイヤーは、必ず「シナリオに沿った行動 = 模範解答」を脳裏に用意してから行うこと。そしてゲームマスターが答えに窮していた場合、すぐに自身の行動を模範解答によってキャンセルする。このときニヤニヤと底意地の悪い笑みなど浮かべず、さっと自分のミスとして流すこと。この「特訓」は、ゲームマスターには考えるチャンスを与えるだけで十分であり、必ずしもその場で答えを出させる必要は無い。より強い効果を期待するのであれば、セッション終了後の感想戦でさりげなく答えを尋ねることで、ゲームマスターのイレギュラーの記憶を強化するのが効果的。くれぐれもセッション中に問い詰めるようなことはしない方がいい。それはゲームマスターの信頼感や、場の空気、参加者のモチベーションに悪影響を及ぼす明確な「悪意」だろうと考える。 [↩]
- [その場でシナリオの再編集を行って対応する] = いわゆる〈セッションハンドリング〉ってヤツ。これを可能とするために、ゲームマスターはシナリオ準備の段階で分解再構築の作業をシッカリやっておくことが望ましい。器械の分解整備を習熟する方法は、一端バラバラにして組みなおす、という訓練を何度も行うことが手っ取り早い。前エントリ『書かれたシナリオの意味と読み方』はその一例。 [↩]
- [同じシナリオを何度も使える] = これはフェイズプロセッション形式で、用意されたシナリオハンドアウトに沿って PC を作成する、という遊び方とも関係する話。プレイヤー各自が使用するシナリオハンドアウトを入れ替えて PC を作成し、同じシナリオを再度プレイするを否定しない/推奨する、という点から。 [↩]
[trpg]まじしゃんず・あかでみいRPG 榊 一郎, 久保田 悠羅, F.E.A.R.
まじしゃんず・あかでみいRPG (ファミ通文庫) 作者: 榊一郎, 久保田悠羅, F.E.A.R. 出版社/メーカー: エンターブレイン 発売日: 2008/12/26 メディア: 文庫 あんまり読み込んでないのですが、書…