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 入院ってのはヒマなので、今のうちに未整理のものをいろいろと整理しておこうと思って、時間のかかる未整理音源の整理をやっちゃえということに。この“音源”ってのは、友人・知人との会話の中で、興味深い話をしたときに録音している録音テープです。ああ、今はデジタルデータだけどさ。

 んで、かなり古いテープの中に、建築工学の勉強をし始めてた友人と「デザイン=設計」についての話をしたものがありました。
 これが TRPG の話と絡んでいて、ちょうど良かったんでご紹介。
 ダイジェストというか、関係ある部分だけ抽出したモンなので、たまに話の通りが良すぎる部分とかもありますが気にしない方向で。
 あと、相手が建築工学やってるだけあって、お互いに建築家の名前がちょろちょろ出て来ますが、知ってる範囲で脚注付けて、あとは Wikipedia の該当記事にリンク張っておきますんで許してください(何)

設計方法論で忘れちゃいけないこと

建築界(?)の設計方法論について
オリハタさん(仮)
「建築にも、いわゆる『設計方法論』ってやつがあってね」
玄兎
「ふむ。ありますか」
オリハタさん(仮)
「もちろん。で、この設計方法論ってのは池辺陽って人が語ってて、その人の弟子の難波和彦って人が『池辺は晩年、設計方法論の限界に突き当たってた』って言ってるわけ」
玄兎
「ほう? 限界」
オリハタさん(仮)
「限界ってのは、つまり『何を作るのか』のフレームも無しに『どうやって作るのか』だけ研究したってしょーがねーでしょ? って話」
玄兎
「嗚呼(笑)」
オリハタさん(仮)
「で、まあ難波氏の話だったか池辺氏の話だったか忘れたけど、そういう中身のない箱を作る方法論ってのは、建築デザインで勝負することからの逃避行動だって言ってんのね」
玄兎
「ヤバい。面白いくらいソックリだ(笑)」
オリハタさん(仮)
「そう?(笑)」
TRPG のシナリオデザイン論
玄兎
「ゲームのシナリオデザイン論でもそういう話はあってね。
 特に TRPG ってタイプのゲームでは、『デザイン論なんか話してるヒマがあったらシナリオ作れ。そして遊べ』ってよく言われる(笑)」
オリハタさん(仮)
「TRPG のシナリオって設計方法論ナシで作れるモンなの?」
玄兎
「出来るっちゃァ出来るし、出来ないっちゃァ出来ない」
オリハタさん(仮)
「そりゃそうでしょ(笑)」
玄兎
「ああ、言葉どおりの意味じゃあなくて。
 TRPG のシナリオってのは基本的に『おはなし』なんだな」
オリハタさん(仮)
「なるほど」
玄兎
「んでほら、『おはなし』とか、そういう創作的な、なんての、『芸術』ってさ、『工学』嫌うっしょ?」
オリハタさん(仮)
「ああ、あるある」
玄兎
「だから中には無尽蔵にネタを供出できるタイヘンなヘンタイもいるんだけど、普通は枯渇する。無くなっちゃう」
オリハタさん(仮)
「タイヘンなヘンタイ(笑)」
玄兎
「そこは置いといて(笑)
 建築みたいに、ただ機能的だったらイイってもんでもないってのが……ああ、いやこれは丹下健三には当てはまらないか」
オリハタさん(仮)
「『機能的なものが美しいのではない』……ってヤツ?」
玄兎
「そう。『美しいものだけが機能的なのだ』ってヤツ。
 あれは自然工学の話って理解でいいのかねェ?
 アンモナイトの異常進化説みたいな」[1]
オリハタさん(仮)
「アンモナイトの話はでもあれ俗説でしょ?」
玄兎
「今は特殊環境に適応した種だって説が主流だっけか」
オリハタさん(仮)
「そうみたい。
 それで、アンモナイトはいいとしても――」
TRPG と〈パターン・ランゲージ〉の話
オリハタさん(仮)
「ところでどう思う? 設計方法論は――」
玄兎
「必要でしょ。
 無くても出来る人は出来るけど、技術継承の天井が低いよ。それじゃ何から手をつけて良いのかワカラナイって人が沢山出てきて、結局デザインを扱えるのは特権階級の人間だけになっちゃうじゃんか?
 だからって規格を統一しなくてもいいからさ、みんなが『俺はこうしてるんだぜ』ってのを開示して、その中から便利そうなやつを各自勝手に拾って使ってれば、とりあえずオッケーだと思うよ。実際に形になっちゃえば、それまでのプロセスなんて関係ないんだし」
オリハタさん(仮)
「あれ、そういえば何かソレ系の本書い――」
玄兎
「その話は勘弁してください(笑)
 そうだなァ……アレグザンダー[2]〈パターン・ランゲージ〉[3] とか」
オリハタさん(仮)
「ふぅん。磯崎新[4] だ」
玄兎
「TRPG って遊びは、言ってみれば〈パターン・ランゲージ〉で仮想空間を構築するんだよ」
オリハタさん(仮)
「なんか面白そうだね。どんな感じに?」
玄兎
「概論で説明すんのは難しいなァ。
 演劇のエチュード。即興劇。あれは分かる?」
オリハタさん(仮)
「MAZDA の(笑)」
玄兎
「そりゃ車だろ(笑)」
オリハタさん(仮)
「よくは知らないけど、なに?」
玄兎
「エチュードってのは演劇の練習方法でな。
 大雑把に言うと、環境、状況、人格だけ設定して、台本ナシでやる演劇のこと[5] って理解でいいと思う」
オリハタさん(仮)
「あー……つまりこういうこと?
 環境とか状況とか人格ってのが〈パターン〉で、その〈パターン〉を配置して〈ランゲージ〉を構築していく」
玄兎
「正解。さすが学生さん」
オリハタさん(仮)
「褒めていいよ」
玄兎
「いいこでちゅねー(笑)」
オリハタさん(仮)
「バーカ(笑)」
メタメタのメタを回避する方法
玄兎
「で、逃避行動だっけ?」
オリハタさん(仮)
「そう。メタな視点は無限にメタにいけるから――」
玄兎
「メタ。メタのメタ。メタのメタのメタ……」
オリハタさん(仮)
「そうなっちゃうでしょ」
玄兎
「勝負から逃げる。勝負から逃げることから逃げる。勝負から逃げることから逃げることから逃げる……もう意味が分からない(笑)」
オリハタさん(仮)
「無限のマトリョーシカになっちゃう」
玄兎
「それはそれで好きだけど、お遊びだわなァ。現実的じゃない」
オリハタさん(仮)
「だから『設計方法論』を批判する声は尽きなくて」
玄兎
「建築にはアレグザンダーも磯崎新もいるのに、なんでじゃろ。
 オリハタ(仮)は、その解法は何があると思う?」
オリハタさん(仮)
「何がって?」
玄兎
「つまりその設計方法論に、何を加えれば無限メタを回避できると思う?
 ああ、何か削るんでもいいけど」
オリハタさん(仮)
「えーと……『誰のために』かな」
玄兎
「ほう?」
オリハタさん(仮)
「メタに進むと『何のために』があっても『誰のために』が無くなってくこと多いでしょ。手段の目的化が、逃避行動って言われちゃうんだから――」
玄兎
「目的として『誰のために』研究してるのかが有れば、ブレずに済むと」
オリハタさん(仮)
「だと、思うんだけど」
玄兎
「いいね。同意」
オリハタさん(仮)
「よかったー。若造って言われるかと思った(笑)」
玄兎
「言わねーでしょうが。普段からンなコト(笑)
 ……まあ、確かに若いなーとは思うけどね。でも、大事なことだと思う。
 それこそ丹下健三でいて欲しい。美しさと機能は不可分だ」
オリハタさん(仮)
「美学だね」
玄兎
「美学だとも」
オリハタさん(仮)
「設計方法論の話は、これくらいだけど、まだ録音してる?」
玄兎
「ああ――」(カチリ)

 以上が前エントリ『シナリオ記法(我流)』で「準備の準備」を書かずにおれなかった理由です。
 そしてコレ起こしてる最中に「そういやアレグザンダーのパターン記法に沿って書いてねーや」と墓穴を掘ったことに気付いて、ヤバイヤバイとセルフ大騒ぎ(笑)

【余談 : アレグザンダーのパターン記法】
 アレグザンダーのパターン記法は、以下の序列で記述します。

  1. パターン名 = パターンの名称。パターン名の後には重要度に応じてアスタリスク [*] を 0~2個つける。アスタリスクが多いほど重要。
  2. 写真 = パターンが使用される典型的な様子。イメージ。
  3. 導入 = より大きなパターンへの参照。
  4. 3個のアスタリスク = [* * *] のこと。問題の始まりを表す。
  5. ヘッドライン = 問題を端的に(1~2行で)表したもの。ボールド。
  6. 問題 = 問題の解説。
  7. 解法 = 問題の解法。指示の形で書く。ボールド。
  8. 図解 = 解法を図で表したもの。
  9. 3個のアスタリスク = [* * *] のこと。問題の終わりを表す。
  10. 関連パターン = より細かいパターンへの参照。

 アレグザンダーは建築家なので [2] が「写真」となってますが、扱うパターンが物体でないなど可視化されていない場合は「典型的な例」としてテキスト等でも構わないと思います。
 よく出来たメディア・テンプレートですので、覚えておくと便利です。

  1. [アンモナイトの異常進化説] = 数学者に愛された俗説(笑)。類似した生物であるアンモナイトとオウムガイを比較したとき、アンモナイトは絶滅したがオウムガイは現在も生きている。この理由について、オウムガイの殻は生物曲線(またはフラクタル・パターン)的に整った美しいものであるのに対して、アンモナイトの殻は生物曲線的に歪であるため、生物としての負荷がかかり、絶滅した……とする説。また、後期アンモナイトには殻がオウムガイのそれとよく似た「平面渦」状のものだけでなく、絡まった紐のようなものや、知恵の輪のような不可解な形状をしたものまであり、これらもアンモナイトの進化の限界と見なされていた。なお、現在では本文にあるとおり、特殊環境に適応した種だった、とする説が有力。 []
  2. [アレグザンダー] = (Christopher Alexander)ウィーン出身の建築家。都市計画理論として『パターン・ランゲージ』を提唱した人物。 []
  3. [パターン・ランゲージ] = 単語が集まって文章となるように、〈パターン〉が集まって〈ランゲージ〉になる、という都市計画の理論。同理論は建築のみならず、様々な分野に影響を与えている。これを TRPG に持ち込むなら、〈パターン・ランゲージ〉における住民と建築家の関係性は、プレイヤーとゲームマスターの関係性に非常に近いと考えている。 []
  4. [磯崎新] = 日本の建築家。丹下事務所出身の建築家で、黒川紀章のライバルとか言われた人(当人は「役割分担をしているだけ」と認識していたらしい)。分裂方向へ進んでいた建築界(?)の状況を研究、編纂して批評言語まで作り上げ、建築の文化的価値を再定義した怪人。 []
  5. [エチュード] = 余談だが、実際にやってみるとこれが難しい。TRPG は暗黙知的に「場面の意味」が設定されているケースがほとんどだが、エチュードでは通常、「場面の意味」を設定しない。更には他の演者が何を考えているのかも分からない(そうした打ち合わせはしない)となれば、演技の中でそれらを探らなければならず、つまりは本当に〈対話〉しなければならなくなるためだ。 []
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3 Responses to “[self][chat] とても重要な当たり前のこと”

  1. B.W より:

    こんばんはー・・・って、

    > 『何を作るのか』のフレームも無しに『どうやって作るのか』だけ研究したってしょーがねー
    > ・・・
    > 『デザイン論なんか話してるヒマがあったらシナリオ作れ。そして遊べ』

    おおぅっ?!
    し、シナリオ作ろう、シナリオ。そ、そうだ! ちょうどそう思ってたとこなんすよ。えっと、デモンパ、そう、デモンパラサイトあたりがいいかなぁ。あは、あはははは・・・。いや、ホントですって(汗)

    ・・・なんて(笑)

  2. 玄兎 より:

    @B.Wさん

    > 『デザイン論なんか話してるヒマがあったらシナリオ作れ。そして遊べ』
     良く言われたモンですよ。根性論ですな(笑)
     でも、本文中でオリハタさん(仮)が語ってますが、『誰のために』が有れば問題にならないというか、無駄にはならないコトだと思いますんで。ハイ。
    (一般論にできない点さえ自覚してれば『自分が使うため』でイイ(笑))
     ましてやシナリオデザイン論なんて、全てのゲームマスターとその候補者たちが知りたがってるわけで(笑)、そういうモンは開示されるだけで意味があると思ってます。
     
     一朝一夕にできるモンではないと思うし、色んな人のエッセンスを拾い集めていくと、自分用にフィルタリングするだけでえらい手間がかかりそうなモンです。色んなコトやりながら、のんびり進めればヨイかと。
     応援してますよ(^^

  3. [trpg][book]ストーリーメーカー 創作のための物語論 大塚英志

    ストーリーメーカー 創作のための物語論 (アスキー新書 84) (アスキー新書 84) 作者: 大塚英志 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス 発売日: 2008/10/09 メディア: 新書 大塚英志は民…

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